不動産取引の契約不適合責任について簡単に説明します!売主が注意すべき期間や免責の特約は何でしょうか?
大阪市東成区に事務所を構える株式会社アークです。いつもアークのブログご覧いただきありがとうございます。
売買契約が成立すると、買主は代金を支払い、売主はその物品を引き渡します。
これは私たちの日常生活で行う買い物と同じプロセスです。
しかし、すべての取引がスムーズに進むわけではありません。
買主が代金を支払うのは、購入する物品がその価値に見合うと期待しているからですが、
実際に引き渡される物品がその期待に応えないこともあります。
売買において目的物に関するトラブルが発生した場合、
買主が泣き寝入りするのは非常に不公平です。そこで、買主を保護するために「契約不適合責任」が民法に定められています。
今回は、不動産取引における契約不適合責任について、わかりやすく解説いたします。
目次
- ○ 契約不適合責任についての基本的な理解
- ・契約不適合責任とは
- ・契約の不適合および目的物の品質に関する事項
- ・瑕疵担保責任との相違点
- ○ 契約不適合責任が問われた場合の影響とは?買主が行使できる権利について
- ・追完請求権
- ・代金減額請求権
- ・損害賠償請求権
- ・契約解除権
- ○ 不動産売却で売主が気をつけたいポイント
- ・責任を問われる具体的なケース
- ・免責条項に関する特約について
- ・契約不適合責任の期間
- ・不動産買取なら契約不適合責任がない
- ○ 最後に
契約不適合責任についての基本的な理解
契約不適合責任についての基本的な知識をお伝えします。
この責任が何を意味するのかを理解することは非常に重要です。
また、瑕疵担保責任との違いについても明確にしておきましょう。
契約不適合責任とは
契約不適合責任とは、簡単に言えば「約束した商品と実際に受け取った商品が異なる」という買主の主張を認め、
売主にその責任を負わせることを指します。
この責任は民法第562条から第564条に明記されており、
具体的には「引き渡された物が契約の内容に合致しない場合」に発生します(第562条第1項)。
さらに、売買によって買主に移転した権利もこの責任の対象となります(民法第565条)。
契約の不適合および目的物の品質に関する事項
住宅が通常備えている品質は、売買契約書に明記されることはありません。
たとえば、居住用として取引される住宅は、屋根や壁によって雨風を防ぎ、生活空間が確保されていることが当然と考えられています。
契約書に記載されていないからといって、
契約上求められる品質を欠いた住宅を販売することは許されず、売主は契約不適合として責任を問われることになります。
目的物の種類や数量は契約と異なる場合に容易に確認できますが、品質に関しては主観的な要素が含まれます。
売主と買主の認識に大きな差がある場合、トラブルが生じる可能性があるため、売主は契約前に十分な説明を行う必要があります。
瑕疵担保責任との相違点
契約不適合責任は、2020年4月1日から施行された民法に新たに追加された規定です。
それ以前は、瑕疵担保責任と呼ばれる売主の責任が存在していました。瑕疵とは、不具合や欠陥を指します。
瑕疵担保責任の下では、買主が注意を払っても発見できなかった不具合や欠陥(隠れた瑕疵)に対してのみ、
売主が責任を負うことになっていました。しかし、買主が瑕疵を認識していなかったかどうかは、常に争点となっていました。
このような背景から、契約不適合責任では契約との適合性に重点を置くことになりました。
具体的には、契約に適合しない物品が引き渡された場合、買主は売主に対して責任を追及することが可能です。
この新たな規定により、瑕疵担保責任に比べて買主の請求権は拡大し、同時に売主の責任も増大しています。
契約不適合責任が問われた場合の影響とは?買主が行使できる権利について
契約不適合責任に基づいて認められる買主の請求権は、次の4つに分類されます。
1. 追完請求権
2. 代金減額請求権
3. 損害賠償請求権
4. 契約解除権
この中で、追完請求権と代金減額請求権は契約不適合責任において新たに追加されたものです。
追完請求権
買主は、引き渡された不動産が契約に適合しない場合、売主に対して以下のいずれかの方法で、
契約に適合した状態にするよう請求することができます。
1. 目的物の修理
2. 代替物の引渡し
3. 不足分の引渡し
しかし、不動産は唯一無二の存在であるため、代替物や不足分を提供して契約に適合させることは難しいのが実情です。
そのため、例えば雨漏りなど不動産の一部機能に契約不適合が生じた場合には、修理や補修によって対応することが求められます。
買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。
ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
代金減額請求権
買主が、売主が対応可能な相当の期間を設定して追完請求を行ったにもかかわらず、
売主が応じない場合、契約不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができます。
しかしながら、契約不適合の内容によっては、売主が対応できない場合も考えられます。
例えば、契約上は100坪の土地の売買であったにもかかわらず、実際には99坪しか存在しない場合、
売主は不足している1坪を追加で引き渡す手段を持っていないことがあります。
このように、売主が追完を行えない場合には、
買主が追完を求めることなく代金の減額(この例では1坪分の減額)を請求することが可能です。
売主が追完を拒否した場合や、契約に適合する見込みがない場合も同様の扱いとなります。
一 履行の追完が不能であるとき。
二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
損害賠償請求権
瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権は、契約不適合責任の下でも認められています。
契約に適合しない不動産が引き渡されたことにより、買主に損害が発生した場合、売主に対して損害賠償を請求することが可能です。
しかしながら、売主に過失がない場合には、損害賠償を請求することはできません(民法第415条第1項ただし書き)。
この点は、契約不適合のみを要件とする追完請求や代金減額請求とは異なるため、注意が必要です。
契約解除権
売主が定められた相当の期間内に追完の請求に応じない場合、買主は契約を解除する権利を有します。
この解除の方法を催告解除と呼びます。
ただし、契約に対する不適合が「契約及び取引上の社会通念に照らして」軽微である場合、契約の解除は認められません。
売主が追完を行えない場合や、追完を拒否した場合、契約に適合する見込みがないと判断されると、
買主は相当な期間を定めた追完の請求を行わなくても契約を解除することができます。このような解除を無催告解除と呼びます(民法第542条)。
契約解除の要件は、代金減額請求の要件と重なる部分があります。
そのため、売主が追完の請求に応じない場合、買主は代金減額請求または契約解除のいずれかを選択することになるでしょう。
不動産売却で売主が気をつけたいポイント
契約不適合を理由に買主から請求がなされるリスクを考慮すると、
売却する不動産に関して買主との情報共有が極めて重要であることが理解できます。
契約の適合性は、仲介を行う不動産会社が作成する売買契約書や重要事項説明書だけではありません。
後に「そのような意図ではなかった」との主張を避けるためにも、買主との合意において不明瞭な点をできる限り減少させる努力が求められます。
不動産の売却に際して、売主が留意すべきポイントをいくつか挙げます。
責任を問われる具体的なケース
売主が雨漏りの存在に気づかず、買主に対してその事実を告知せずに住宅を売却した場合を考察します。
この状況において、買主は雨漏りの修理を求める権利を有し、売主が修理に応じない場合には、
修理費用に相当する金額を売却代金から差し引くよう請求することも可能です。
雨漏りは居住環境に深刻な影響を及ぼす欠陥であるため、その程度が深刻であれば契約の解除が求められる可能性もあります。
さらに、雨漏りによって損害が発生した場合には損害賠償を請求することも考えられますが、
売主が雨漏りの存在を知りながら隠していた場合を除き、売主に責任がない限り請求は認められません。
とはいえ、売主が本当にその事実を知らなかったことを証明するのは容易ではなく、トラブルが発生するリスクは避けられないでしょう。
免責条項に関する特約について
契約不適合責任は、当事者間の合意(契約上の特約)により、一部または全てを免除することが可能です。
例えば、買主の請求権を追完請求のみに制限したり、
売主が契約不適合責任を負わない旨を定めたりすることができ、契約の自由が尊重されます。
ただし、例外として、契約不適合責任を免除する特約を設けた場合でも、
故意に告げなかった事実については責任を免れないことになります(民法第572条)。
つまり、売主が契約不適合を意図的に隠蔽した場合には、免責されることはないということです。
契約不適合責任の期間
買主は、目的物の種類や品質に関する契約不適合を認識した日から1年以内に売主に通知しなければ、
追完などの請求を行うことができません。
ただし、数量や権利に関する契約不適合については、通知の要件は適用されません。
なお、以下のいずれかの状況に該当する場合、1年以内の通知要件は適用されなくなります。
・売主が契約不適合を認識しながら目的物を引き渡した場合
・売主の重大な過失により契約不適合を認識できなかった場合
買主の請求権の行使期間は、一般的な債権の消滅時効と同様に、請求可能であることを知ってから5年、
または請求可能となった時点から10年となります。
多くの場合、買主は契約不適合を認識した時点で請求可能であることを理解するため、その時点から5年の期間が適用されると考えられます。
不動産買取なら契約不適合責任がない
契約不適合責任は、瑕疵担保責任に比べて買主の請求権が広がり、売主にとっては売却後のリスクが増大しました。
このため、売主は契約不適合責任の一部を免責したいと考えることが一般的です。
しかし、買主が免責に同意しなければ、売買契約は成立しません。
個人を対象とした不動産の売却は、以前よりも難しくなったと言えるでしょう。
一方で、不動産買取は、不動産会社が直接買主となり不動産を購入する方法です。
このため、不動産買取においては契約不適合責任を免責することが一般的です。
契約不適合責任に関するリスクを回避しながら不動産を売却したい場合、不動産買取は非常に有効な手段の一つと考えられます。
最後に
最後までお読みいただきありがとうございました。
不動産のご依頼、ご相談は、お気軽にアークにお問い合わせ下さい。
※お電話での受付もお待ちしております!!